第4話 裁判後編

 それから、次の日の裁判では主にパムラや領主たちが話を聞かれた。

「では、本当にお金と言ったのに深い意味はないと」

「はい」

「そんなにパムラをだしに過剰な税金を求めたのは何故ですか?」

「使用人にしたかったのですが、上手くいかないものでしたので」

 そして、円卓会議にさえその追及は及んだ。その下部組織の偉い人達にも。

「どうして情報を伝えなかったのです」

「魔力を持たない貨幣、そもそも魔法が効果を失って使えなくなるなどありえないと思ったからです」

「ですが現に今存在していることについては?」

「申し開きもありません」

 そうして、裁判に対して長い議論が繰り返されて、判決が下された。

「判決、被告厳島海良に労働刑300年の刑を言い渡す」

 それに安堵する者、静観する者、落胆する者、驚愕する者、様々だが裁判長でもある女王により内容の詳細が伝えられる。

「まず、通貨偽造についてですが、そもそも私たちの認識不足により通貨の信用が担保できる状態だったのか疑念の残る状況でした。だからこそ、原告の求刑する程度の処罰は不当であると認めます。一方で、本人が偽造したことを認めている。悪意はないが意思が介在はしている。これにより無罪も無いといたします。そして今回の行動が悪意ある、平時である状況であればそれは国家反逆罪相当の罪が適応される重大犯罪であることを認めるため、この求刑をいたします。被告、異論はありますか」

 パムラを介して理由の説明と意思の確認が行われる。そして。

「刑を認めました」

「分かりました。では、閉廷」

 裁判の終了を告げる鐘が鳴らされる。こうして長い時間は終えられるのだった。それから、裁判を終えて勇者たちは体を休める場所で話すことにしたという。

「随分早い決着だねって聞いて」

「海良! どうしてそんな呑気にしているの⁉ 労働刑300年だよ! 危機感持ってよ!」

「良いから」

 パムラは不服そうだが、テノサさんに質問する。すると、彼女も肩をすくめる。

 そしていくらか話をされた後、パムラから理由を伝えられる。

「えっとね、まずまだ裁判所が全然少ないんだって。王族と同等の責任を負えるほどの裁判所の普及が追いついていないから、これでもむしろ長い方なんだって。だから、その感覚は正しいって」

 だろうな、なんて思った。国家反逆罪相当の裁判、しかも弁護人が王族の隣に並んでいた人たちを糾弾し始めるとかいう異常事態の起きた裁判が二日で決着するなどおかしい。この時勇者はそう述べたようだ。

 このような裁判なら数ヶ月かけてでも丁寧に裁判をして、検察と弁護人双方が納得するまで裁判をするべきだったと。

「でもどうするのさ。労働刑300年なんて、一生かけても返せるわけが」

「因みに質問だが、労働刑って何をすればいいんだ。一応テノサさんに確認を取ってくれ」

「そうだね、聞いてみる」

 そうして聞かれると、次の返答が来る。

「普通はやっぱり給料として最低限のお金か食事しかない場所で働くことだって。あとは、労働の対価として何かを差し出すとか」

「……」

 それを聞いた勇者は、ふと考えを巡らせたという。そしてこう切り出して、伝えるように言ったというが真実は分からない。だが、こう言われたテサノは興味深そうに聞いたという。

「教えてもらおうか、異世界の知識とやらを」

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