第7話 戦争の前に4

「それじゃあ、これでサルバーン国の王様とか言う人と話せるんだね?」

「はい、それは魔法通信石と言って、対応した魔力を持った石同士で話が出来るものです。基本的に高価なものなので、個別の部隊同士の連絡に用いることは無いため、恐らくは本国からの連絡を受信するための物かと」

「なるほど、誰が使おうか?」

 そこで、俺達は困惑する。猿渡も、落合も、誰もが困惑していた。

「後藤、今俺達はお前に従って動いているんだぞ」

「指揮官が逆にやらないのは変だと思う」

「私はあくまで指揮権を預かっているだけで、この三千人の兵の総大将は別にいるでしょ? 確か城の中で守っているだけだけれど」

「まあやるならそれが一番でしょうね」

「じゃあ私も一緒に行くから、軍君お願い」

「はい」

 そう言って、俺達はオルギウス上に転移して、話をザリスさんに伝えた。

「では、私が国王に話を伝えるように伝えます。ご同席しますか?」

 俺いいですと言いそうになったら「二人でお願いします」と先に後藤に言われたために向かう事になった。

「それでは国王、お願いいたします」

「うむ」

 そうして、魔法通信席が光ると何か声が聞こえる。

「第二大隊! 第二大隊、聞こえるか! 報告はどうなっている! まさか捕まったわけではあるまいな!」

 大きな声が聞こえ、俺は耳を塞ぎそうになったが国王は努めて平静にしゃべり始める。

「オルギウス国王、バステル・オルギウスだ。サルバーン国の者よ、名を名乗れ」

「オルギウス国王だと! 何故……まあ良い。私はサルバーン国国営騎士団第一騎士団長カイルだ。何の用だ」

「我がオルギウス王国は国王不在の際に貴殿たちから兵を差し向けられ、三つの村が既に被害を受けた。これに対し、我が国は大変遺憾だと思う。また、既に貴殿らの兵力が約六千人捕虜として現在城の地下牢に収監しておる。こ奴らに話を聞いた所、間違いなく戦争だと口を揃えて言う。これはどういうことかね」

「何を言うかと思えば、貴殿らは気が付かないのであれば私が代弁しよう。サルバーン国は貴様らオルギウス王国に戦争を仕掛ける。これはサルバーン国国王の代弁だ」

「少々よろしいでしょうか」

「なんだ」

 ここで、後藤が話に入った。

「初めまして。私は倭国自衛隊所属、後藤恵梨香特別陸士長であり、現在三千のオルギウス国兵士の代理指揮官をしているものです」

「ほう」

「我々倭国は今回あなた達に大量殺人の容疑があるとみて、またこれを指示したとみて調査のために自衛隊を派遣する予定であります。これについて何か異論はないでしょうか」

「何かと思えば大量殺人? 村をたかが三つやった程度で何を調査するのだ? 確かに我々は村を適当に最初襲う様に言ったかもしれないが、たかがその程度でいちいち何をほざくのだ」

「我々倭国はあなた方に不当な大量殺人を犯したとみて大変遺憾の意を示し、これに対抗するべく自衛隊の派遣をする予定です」

「は、たかが名も知らない蛮族が集まったところで我らの勝利はゆるぎない。一緒にその倭国とやらも属領としてくれよう」

「それは、我々に宣戦布告すると言う事でしょうか」

「その程度も言わなければ分からない蛮族とは、その通りだ。当然これは国王の代弁だ」

「そうですか」

「だが、我々は捕虜六千人を返してもらわなければならない。直ぐにでも返さなければ、その時は何が起こるか覚えているのだな」

 そう言って、通信は一方的に切れた。

「なあ、後藤。もしかして」

「うん、ちゃんと倭国に宣戦布告した証拠は押さえたよ。これで堂々と海外派遣できるね」

「はは、ちゃっかりしているな」

「このレコーダー、何で持っているのか分からなかったけれどきっとこのためだね。落合君も最初からなぜか銃持っていたし」

「二人とも、よいかな」

 そこで、オルギウス王は語り始めた。

「ようやく先ほど自衛隊とやらの鉄の馬が十頭程到着した。これを戦場に派遣するのかね」

「はい」

「ですが、たかが10頭ほどでは」

「大丈夫です。自衛隊がそんなに派遣したのであれば十分戦力です。じゃあ軍君、戦場まで運ぶために全部転移お願いね」

「お前なんか人使い荒くないか?」

 それから俺は、十台の戦車を転移させた俺は、後藤と共に再び戦場に向かった。

「73式装甲車、初めて見た」

「これ対人戦だよな? こんなの使って大丈夫なのか?」

「あくまでも対人戦のための使用だから大丈夫でしょ。近代兵器の力思い知らせてやりましょう」

 そう言って、俺達は四千にさらに追加して数万の兵士が守る城を見据えるのだった。

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