第4話 戦争の前に1

 それから俺達は次の日、急いで広島は呉に移動。護衛艦で即座に移動することになった。

「で、何でアルテアまでここにいるのさ⁉」

 海上自衛隊の護衛艦みなづきの中で、俺はアルテアに質問する。

「それは私がこの鉄の船に乗るのを希望したからだ。私の住む神聖な森にもいずれ向かうのだろう」

「確かにそうだけれど、まずはオルギウス王国の件に自衛隊は動くから明らかに俺達お荷物のはずだよ」

「何を言う。戦略級魔法使いとしてオルギウス王直々に君は呼ばれたではないか。それに、神聖なる森に帰ると理由はあるからこそ私だって乗せてもらえたんだ」

「だからって、俺に何が出来るのさ」

「戦えるだろう」

「俺戦えないよ! 別に自衛官じゃないんだよ!」

「大丈夫だ、お前ならできる」

「何だよそれ」

 そう言いながら、俺達は約一日の船旅の末にオルギウス王国近くの海に到着した。

「何だ? もうすぐ陸なのになぜ進まない」

 甲板に呼ばれた俺達は、船が進まない様子を眺めていた。

「水深が足りないんだよきっと。船が大きすぎてこれ以上進むと座礁するから」

「じゃあどうするのだ」

「安心しな、この護衛艦はヘリコプター搭載護衛艦の側面もある。だから」

 その時だ、甲板がハッチの如く開き、そこからヘリコプターが出現したのは。

「さあ乗るんだ。あれに乗ってこれからオルギウス王国の王城に一番近い平原まで一直線に移動してもらう」

「兄貴は来ないの?」

「俺はここでもう少し本国と連絡の仕事がある。それが終わったらまた会おう」

 そう言って、俺達は分かれて移動することになった。因みに、空飛ぶ乗り物は苦手なのか終始アルテアはヘリコプターの中で怯えていた。それから数時間後。

「待て待て、この高さから降りるのか⁉」

「アルテア、後ろがつっかえているから早く降りてよ」

「待ってくれ、もう少し覚悟を」

 そんな感じにアルテアが下りないというトラブルはあったが、オルギウス王国の平原に降り立った俺達は遣いの馬車に揺られてオルギウス城に到着した。

「本当に城だ」

「来るのは初めてかな、少年」

「俺庶民ですから。こういうの初めて」

「ははは、平民とは。あれだけ貴族顔負けの生活をしているのに、倭国は本当に裕福な国なのだな」

 そんな風に話しながら城に通される。

「王! ご無事でしたか!」

「ザリス済まなかったな」

 王城に入ってしばらくした時、目の前から、一人の男が走ってやって来る。

「良かったです。倭国と言う未開の国にいると聞いた時はどうしようかと思いましたよ」

「そうか、それは心配をかけたな。だが、倭国は未開の国などではない。あれぞまさしく天の国だ。くれぐれも丁寧にもてなしなさい」

「は、はい。ところで、後ろの男と森の民は?」

「ああ、倭国で知り合った人達だ。森の民にはこの争いの後に帰る手はずを行うからくれぐれも不手際を起こすな。それに、後ろの少年は戦略級魔法使いだ。こちらも注意したまえよ」

「な、はいいいい!」

「ところで、礼を言うべき三人の倭国の人たちは何処にいるのかね」

「現在は大食堂でお食事をとられているはずです」

「そうか」

 そう言いながら、俺達はメイドに引き連れられて王様と一緒に移動した。そして、大きな扉から中に入る。

「ん? 誰だ?」

「王様じゃないかな、この状況でいかにもな服装しているし」

「それじゃあ早く挨拶しなきゃ。ほら、立って」

 そう言って、後藤が他の見慣れた二人を立ち上がらせる。

「バステル・オルギウスだ。君たちがサルバーン国の兵を敗走させた者たちだね」

「はい。後藤恵梨香特別陸士長です。こちら二人は同級生の猿渡一哲に落合翔です」

「猿渡です」

「落合です」

「こちらこそよろしく頼む」

「ところでですが、後ろの人は笠松君で間違いないでしょうか」

「ああ、笠松軍殿だ。私が今回の戦いのために来てもらった」

「へえぇ」

「……」

「分かりました。ですが、この後の具体的な動きは自衛隊内で動きたいために、一般人には話せない情報などもあり、一時退室してもらう可能性もあります。それについてはこちらに従っていただく可能性が高いですが」

「ああ、それで構わない」

「では、そのように上官には伝えます」

 そう言って、後藤は敬礼をする。

「あのポーズは?」

「上の立場の人に対してするポーズ」

「なるほど、では他の二人がしないのは?」

「あの二人はちょっと特殊で」

「おい、何話しているんだ?」

 そこで、猿渡に絡まれる。

「何か随分可愛い女の子と一緒に来たなって思ったけれど、何でコスプレみたいな女の子侍らせているんだお前?」

「そう言う趣味があったの?」

「違う! アルテアは異世界人なんだ」

「異世界人? 何言っているんだお前?」

「まるでこの城の人達みたいなことを言う」

「ああ、こうなるのか⁉」

 話が通じないために、俺は事情説明をする羽目になるのだった。


【補足】

後藤恵梨香……超級の自衛官として天下原学園に所属している生徒。軍の同級生。指揮官の才能があり、臨機応変さにも定評がある。

猿渡一哲……超級の傭兵として天下原学園に所属している生徒。軍の同級生。あらゆるものを武器にできる。さらに武器の習熟速度も速い。

落合翔……超級の狙撃手として天下原学園に所属している生徒。軍の同級生。落ち着いた性格で、冷静に射撃が出来る。

護衛艦みなづき……架空の多用途護衛艦。艦艇番号53DDA。作中で出たようにヘリコプターで人員を運んだり、海上警備を目的としている。輸送艦も随伴しているが今回文中からは省略。今回の場合あくまで任務は大量殺人の調査だが、異世界と言う事情を考慮して護衛艦が出動した。

この番号の艦艇はオイルショックの件で計画が無くなった奴と同じだって、知らんな。

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