第19話 淫魔との戦闘1
【海良視点】
「さて、どうしようかな……」
いい加減無機質な迷路のような構造物の中を進んでいるが、どうしたらよいのか分からない。僅かな可能性に信じておしっこをしたようだが、迷っていたようである。
「せめてナエシエと合流……」
「ボスー!」
タイミングよく、ナエシエが勢いそのままに抱きついてくる。一応狙い通りのようだが、おしっこの匂いで嗅覚の鋭いナエシエに見つけてもらおうとしたようである。
「大丈夫でしたか、海良様」
「ああ、アラエも元気そうで良かった」
「なあ、ちょっといいか」
トプシュワは海良に話しかける。
「あんた、私を選んだのが何かの強さって本当か」
「えっ、何の話」
「奴隷として私を選んだ理由だよ」
「ああ、それはそうだが」
「そっか」
この時彼女は憑き物が落ちたような顔を少しだけしたようである。海良は何の話かわからなかったようだが。
「よし、それじゃあそろそろ合流しよ……」
ドガアン!
【パムラ視点・メルビー視点】
「ご! ごめんなさい、ごめんなさい!」
「海良、大丈夫!?」
マニュエチとパムラが慌てて確認するそばで、イワミミとテノサは恐ろしいものを見る顔をしていた。
「これはどういうことだ」
「いや、壁の向こうに何かあるとイワミミが言い出してな」
「それで、魔力を確認してもらったら魔物ではないっていうから知り合いかもってなって。それで、じゃあ合流しようってなって」
「壁を壊したの?」
人が通れる程度の穴の空いた壁を見て、二人は弁明する。
「ち、違うんです。まさか壁がこんなに簡単に壊れるくらい弱いなんて」
「私だってハンマー初めてだからさあ、勝手が分からなくって」
「あれ? 何も無いですね」
そこで、さらに扉が出現したかと思えばメルビーがやって来た。
「あ! 楽しそうなことしているリーダーね!」
「リーダー?」
何かまたよくわからない呼び方され始めたし。あれは、エティエトだよな。なんでこんなに距離近くなっているんだ?
「あんたもずいぶん厄介な人に好かれたんやな」
「守護番殿さえよければ私は文句は言いません。どんなことでもする覚悟です」
「はあ?」
何かベリメと守護獣の娘から変な話のかけられ方をしたが、メルビーがニヤニヤと近づいてくる。
「さあさあ、どうやら準備は出来たようですしこの幻影をこじ開けましょう」
「え?」
「メルビー天秤の効果は相手の攻撃の逆利用。要するに、こんな事も簡単なのです」
そういった瞬間に、天秤から光があふれる。そして……。
「壁が」
「壁も幻影。触覚すら欺く魔法だったようですね。ですが、種が分かれば何でもありません」
メルビーの先導で幻影により迷路だと思っていた広間を歩くと隠されるように存在する扉に行き着く。そして、扉を開けると。
「なんで、なんでなんで何で!? どうして魔法があんた達には効かないのよ!」
淫魔が怒りに怒った様子でこちらを見ている。
「ミルミ、そう言ったか。お前に聞きたいことがある」
「何よ」
「あれはなんだ」
今いる個室の奥にある何かを指して、俺達は質問をする。
「ああ、ご飯のこと?」
「ご飯?」
「私達『解読中』はご飯が動物の精液や乳液、後は汗や血液とかの体液なの。だからああして、家畜にして集めているの」
そう言って、今までに捕まった「勇者たちが捕まる触手のような壁」について説明するのだった。近づいて何かすると、手には白い液体がついてそれを美味しそうに食べている。
「何て不愉快な」
「酷いね」
「家畜を飼うのなんか人間もやっているでしょ? 自分達が家畜になるのは嫌は通用しないんじゃない? まあ良いや、新しい家畜に皆もなろうね」
その言葉と同時に戦闘が始まった。
「じゃあ! 私は役立たずだから頑張ってくれ!」
「頑張ってください海良様」
イワミミとメルビーが同時に戦線離脱する。まあこれは仕方ないと思う。そもそもイワミミは非常時の連絡手段として何か使える装置がないか、そう言った相談役として連れてきたためボス戦が始まるとやることが無い。
メルビーも先程幻影を解除するのに力を一度使い切ったため戦えない。
「飛行する対象、地上相手とは勝手が違いますね」
「魔法はその点落下しないで真っ直ぐ進むから都合がいいんだ。この違いは重力によるものらしい」
「しかし、狙いすますの大変やな」
一方で守護獣の娘とテノサとべリメは弓矢と魔法、そして投げナイフで遠距離攻撃が出来るからこそ飛行している淫魔が相手でも攻撃できるため大変そうである。弓矢やナイフの在庫にも糸目をつけずバンバン放ち、魔法も躊躇なく撃っていく。
「本当に良いんだね、私達何もしなくて」
「ああ、俺も攻撃するからしばらく何もしなくていい。『狙撃』」
パムラ達は攻撃手段が近接の武器の為参加できない。だから様子見している。正確にはイワミミとメルビーを守るのをかってでている。ただ、パムラ、アラエ、マニュエチ、エティエト、トプシュワ、ナエシエと人が多すぎるため過剰戦力感は否めない。
「あーん、攻撃できなーい」
相手も相手で攻撃できないでいた。魔法の弾のようなもので反撃しているが、三人の攻撃に対して一人では分が悪いか。しかし、ここで敵だからこその攻撃をしてきた。
「纏めて吹き飛べ!」
「! マニュエチちゃん!」
「は、はい! アイスウォール!」
広範囲攻撃、それも囚われの勇者たちも攻撃対象の攻撃が放たれることで急いでマニュエチの魔法で防御をする。
「ふーん、守るんだ。じゃあもっと派手にやるね!」
「みんな!」
「セイントガード」
「魔法を切るのは大変ね!」
「これ本当にやらないといけねえのか!」
「あの男に従うと決めたなら腹をくくれ」
パムラの指示に、エティエト、ナエシエ、トプシュワがそれぞれ対応する。魔法で防いだり武器で対応したり。しかし、ここで遂に彼女は禁じ手をした。
「残念でした」
「! お前」
「何で攻撃しないのか分からないけれど、攻撃しない人から倒すのが普通だよね?」
淫魔は海良に近づくとその魔法を使うのだった。
「『魅了』」
淫魔の真骨頂ともいえる魔法。その影響に海良が沈む。
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