第4話 毎日任務

「良し、じゃあ今日も頑張るか」

「ねーねー、あんたあれだけしか出来ないなんて言わないでしょうね」

 例のステータス画面を見せた際の一件以来、ペスティは何でか出来ることがあれしかないのかと騒いでいた。

「何でだよ」

「いや、だってあれだけ画面が私の姿だけって訳じゃなくってなんか色々とゴチャゴチャしていたのに何も出来ることがありませんなんて何かおかしくないのかなって思ってさ」

 そんな風に鋭いのか何なのか、そんなことを言い出す。

「それにほら、日本円で変えるものだって私たちの国のゴールド以外にも何かあるんじゃないかなって思ってさ」

 本当に無駄に鋭いなと思う。しかし、今ここでそれをあれこれ言えば絶対に「今すぐもっとお金を使って何かしなさい」なんて言われるのが見えているため俺は使わないでいた。

「闘技場?」

「はい」

 そこで受付嬢の女性が少し申し訳なさそうにそう伝えて来た。

「端的にいえば、妖精を使った強さ比べの施設ですね」

「はい」

「信頼関係を築けた妖精と契約者同士であるほど強い、そんな考えから昔から形を変える事はあっても存在はし続けた戦いのための施設です。そこでは戦う事で色々なお土産や特別な妖精など何かお礼をもらうことも出来るとのことです」

「へえ」

 しかし何だろう。ペスティが何だか受付嬢さんを凄く信じられない物を見るような目で見ている事。そして受付嬢さんの方も今までにない位顔を取り繕って話していることに違和感を持つ。

 まあ後者に関してはもしかしたら違うのかもしれないけれど。

「とにかく、何かもし日程が合えばご参加をよろしくお願いいたします」

「はい」

 そう言って俺はまた今日の仕事に向かうのだった。

「何か怪しいわね、あの女性」

 ペスティがなんか探偵みたいにそんなことを言っているが、俺はそれよりも今日解放されたとある機能が気になっていて妖精たちに手伝ってもあろうとおもっていた。

「ペスティ、妖精たちに少し依頼を出しても良いか」

「なに、どうしたの」

「ああ、毎日任務って言う物を参加してもらいたいんだ」

「毎日任務」

 直訳してしまえばデイリーミッションって言っているって事は、ゲームをやっていた交配によると毎日何回かだけ挑戦できる任務の事である。

 そして、それを達成することで何かボーナスをもらえるという物だ。

「それがどうしたの」

「何とな、どうも妖精たちに向かってもらうんだけれどその間の時間は別にこちらの時間に依存しないらしい」

「? どういう事」

「そもそも別の次元? というか何かそれ専用の空間? らしい場所に向かうとか何とかでなんか戦えるらしい」

「へえ」

「それで戦うと特別な道具やゴールドが手に入るらしい」

「凄いじゃない」

「で、時間は無効でどれくらい頑張ってくれたかには依存しないで帰ってきた時間はだいたいこっちと同じ感覚になるらしい」

「うーん、最後だけイメージつかないけれど、とりあえず妖精たちに向かってもらいましょう。皆やる気満々だし」

 そう言うので、俺は四人妖精を選んだ。酸妖精、毒妖精、犬妖精、花妖精である。水妖精と泥妖精ももちろん参加したがっているため参加はしてもらうのだが、一旦今はお休みいただくことにした。

「行ってらっしゃい」

 俺が何か毎日任務に参加する妖精を選んだタイミングで門の様な物が出現。その門に妖精皆で開いた後に入っていくのが見える。

「それで、この後どのくらいで帰って来るの」

「さあ、どのくらいかは」

「あれ? もう帰って来たみたいよ」

「嘘」

 そう言って門を見ると、確かに妖精たちの姿が見えるのである。まさかこんなにすぐに帰って来るなんて。まさかただ帰ってきただけって訳じゃないよな。なんて思ったのだがどうも違う。

「凄い、妖精のおやつだわ」

 ペスティが嬉しそうに何かを受け取って喜んでいる。

「妖精のおやつ?」

「昇格お菓子とも言うんだけれど、レベルって言うのかしら? なんか契約者の人としての器の大きさや功績などでレベルって言う物が上がるなんてギルドは言うんだけれど、妖精もそのレベルと同じだけのレベルまで上げることが出来るなんて言われているの」

「ほうほう」

「それを出来るようにするのが、この妖精のおやつって言われている物なの。妖精だって滅多に食べられないから皆嬉しそうにしているわ」

 なるほど、なんかレベルの話については今度ギルドの人にでも詳しく聞いてみないといけないような話が出てきてしまったが、とにかくこれで皆が喜ぶなら参加させたことは良かったか。

「後さ、なんか行ける場所が増えたって言って言うけれど本当なの?」

「え?」

「あのね、なんかその毎日任務に成功するとより難しい毎日任務に挑戦できるようになるらしいの」

「へえ」

 ステータス画面を確認してみると、確かにさっきより難易度の高い毎日任務が行けるようになっていた。

「ねね、皆やる気満々みたいだからその難しい方の毎日任務にも参加してみないかしら」

「それは確かに素敵な話だが、ちょっと待ってくれ」

「どうして?」

「毎日任務はもらえる道具の違いで妖精のおやつ以外にも色々あるんだ」

「例えば?」

「説明文によればだが……」

 炎石、風石、水石、土石の他にも、草石、光石、鋼石、氷石、雷石、闇石と言った属性石と呼ばれる特別な石。その他にも何か様々な恩恵をもたらすいわゆる総称して妖精石とよばれる奉納するための道具。

 この世界の共通通貨であるゴールド。

 そして奉納することで妖精たちに恩恵をもたらす道具たち。

それらを手に入れることが出来るのである。

「だから、まずはこれらを一通り手に入れてから、難しいのに挑戦しても大丈夫じゃないかなって思ってさ」

「でも、みんな今すぐにでも難しい物に挑戦したいって感じだよ」

 そう言う妖精たちの方を見ると元気に飛び回っているのが見える。これがやる気に満ちているという事か。

「いきなり大丈夫かよ。失敗しないか」

「失敗したらどうなるの」

「一日の挑戦回数には上限があって、それで失敗もカウントされる可能性があるからあまりリスクは負いたくないな」

「それなら、まだ始めたばかりの方がこれから難しい場所で失敗する回数を減らせるかもしれないしやってみたらいいんじゃないかしら」

「そうかもしれないか」

 そう言って、俺は挑戦をさしてみることにした。今度はさっき行けなかった泥妖精と水妖精を加えて、逆に毒妖精と犬妖精にはお休みしてもらう事にした。

「行ったわね」

 妖精たちを見届けてペスティはそんなことを言っている。

「ああ、大丈夫だと思うか」

「どうだろうね。大丈夫なの……え。大丈夫じゃなさそう! 大丈夫⁉」

 そこで、ペスティが門から戻って来た妖精たちに近寄るとなんだかさっきまで元気に飛び回っていた妖精たちが何だかふらふらと飛んでいる様が見えた。

「うん、そう。なんかやたらと強い敵と戦う事になったんだって」

「ああ」

「うん、うん。失敗してごめんなさいだって」

「大丈夫だ。気にするな」

 とはいっても、ペスティの様子からするにこれ以上妖精たちを無理させるわけにはいかない。かといって、毎日任務のために残りの二人の妖精だけで行かせるのはそれも違うと思う。そこは失敗したことで妖精たちが疲れすぎる上に、手に入るはずだったものも手に入らないまま終わるという事に気が付けなかった俺の落ち度だ。

「とりあえず今日の毎日任務はこれまでだな。そう思うのだった」

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