第3話 決闘

 そしてオリエンテーションと言うあの校舎の説明や、授業を受けるための色々な説明をされた後、俺達は運動場にやって来た。

「じゃあ、試合のルールを改めて説明するね。相手に負けを認めさせる、もしくは剣を落とさせたタイミングで試合は今回終了。試合の審判はマルクス君にしてもらうよ」

「よ、よろしくお願いします」

 マルクスと言うどうも商人の家の出身らしい奴が俺達の中心あたりに立って審判とやらをするらしい。とにかく、あいつが止めるまでは試合は続けるはず。

「両者、礼」

「……」

「……」

 そう言うと、相手が頭を下げてきたので、俺も下げる。これはやらないとだめだと広瀬に言われていたために俺も従う。やらなきゃ飯抜きだと言われたし。

「両者、構え」

「……」

「……」

そして、剣を構える。

「はじめ!」

 そして二人でお互いに距離を詰める。そして互いの木剣がぶつかりカンッと音がする。しかし、相手の剣の方が速く、俺は何時までも剣を打ち込めないでいる。

「フッ、ヤアッ!」

「くそ! くそ!」

広瀬とやったほどのどうしようもの無い感じはない。しかし、明らかに剣を相手は何度もやって来たのが分かるほどに上手かった。だからこそ、自分がこのままだと負けるのが分かった。

「セヤッ、ハッ!」

「……」

 その時、何か分かった気がした。こいつ、狙っている場所が毎回同じだった。だからこそ、俺は敵の狙いに合わせて剣を動かした。すると、明らかに最初より剣で受け止めるのもいなすのも、楽になってきた。

「ナッ、どうしてっ⁉」

「……」

 だからこそ、俺は一瞬のすきを見て剣を振り上げた。

「あ、あ」

「どうだ!」

「しょ、勝者、アルバン君!」

「や、やったああああああああ!」

 勝った! 勝ったぞ!

「おめでとう、二人とも良い試合だった。ただし、アドバイスをした通り動いていたのはアルバン君だけみたいだね」

「え?」

「あなた! そいつにアドバイスをしていたのですか! 卑怯ですわよ!」

「セレアちゃんにもだからアドバイスはしたでしょう。君は聞いていなかったみたいだけれど」

 二人にしたアドバイスはこれだ。

『アルバン君は力任せの攻撃が多い。一撃でも食らうと大変だから、何とかして一切攻撃をさせないで、そして負けを認めさせるんだ。速度が無いから、そこが狙い目かな』

『セレアハートちゃんは武術の型が既に出来ているから技術でははっきり言って負ける。ただし、急所を異常に狙うみたいだからそこが狙い目かな。つまり急所だけ守ればあっさり完封できる』

「速度が無いから、最初に詰めるときに鍔迫り合いに持ち込まないで相手の攻撃をかわして自分の攻撃だけ当てるように動けばそれで勝てたのに、君は鍔迫り合いに持ち込んじゃった。その時点で、きっと聞いていなかったのかなって思ったけれど」

「でも、そうだった。あいつ」

「セレアちゃん」

「……セレア、体の中心ばっか狙ってくるから体の真ん中あたりで剣構えていたら何もしていないのに守れたから隙見て攻撃したらなんか勝てて」

「なっ」

「言ったとおりでしょ。急所ばっかり狙ってくるって」

「ああ」

「どうしてですの⁉」

 そこで、セレアはこれまで以上に怒りだす。

「どうしてあなた私の剣術が分かるんですの⁉ 私が師匠からも指摘されていることを知っているんですの⁉ あなた何者ですの⁉」

「ただのスカウトマンだよ。超凄いって枕詞が付くけれど」

 そこで、俺はこの場にいる五人の生徒たちに聞こえるように語った。

「みんなは超凄い才能を持った人たちだ。ちょっとアドバイスするだけで実力がいくらでも伸びるそんなすごい生徒たちだ。だからこそ、皆心して授業に取り組んでほしい。ここでは努力を怠った物は直ぐに置いていかれる。直ぐに追いつけなくなる。その前に、どうか自分が強くなるために何をするべきか見つけてほしい。そのための指針は示してあげるから。何せここは」

 帝都最高の教室だから。


【補足】

・マルクス……商人の家出身の少年。お兄さんが既にこの学級の卒業生のために紹介されたが、あくまでも広瀬は自分のスカウト眼で採用した。学院に入れたこと自体に委縮気味。帝都出身。

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