第2話 決闘で決めよう
帝都中央学院。世界中の貴族の子息たちが剣術や魔法を学ぶためにやって来る学園。そこに入る生徒たちはその後各国でそれぞれの領地を経営したり、国家運営に携わる機関に所属したりそれぞれが重要なポジションについていく。
「本当に、俺ここで勉強するのか」
アルバンはそんな巨大な校舎を目にして茫然としていた。
「こっちは本校舎だから違うよ、俺達は運動場とかは同じ施設使わせてもらえるけれど、基本的な生活居住空間と座学用の校舎は別館使っているから」
そう言って、広瀬は別館の方に案内する。
「何かふるっちいな」
「それはまあ、別館とは名ばかりの旧校舎だからね。とはいえ、中は大分違うよ」
広瀬は板みたいな何かを入り口の横にかざしたかと思うと、その後に扉を開けた。
そして、中に入って俺は驚いた。
「何だこれ、帝都の学院ってこんなにすごかったのか」
巨大なシャンデリアに巨大な石像。床は白亜の石で出来ていて、どこもかしこもきれいで何とも言えなかった。
「落ち着いて、これは俺の生徒たちが勝手に寄贈してきた品々や備品だから学園から支給された物じゃないんだよ。とりあえず一通り施設を紹介するから」
そう言って、広瀬とかいう男は俺を案内し始める。
医務室、職員室、男子寮、女子寮、そして俺達の教室。魔術実験室やら、化学実験室やら、図書館やら、色々他にも説明があったような気がするが俺には関係ない。
食事が男子寮では朝と夕方に用意されるし、昼飯も教室で食べるように用意してもらえるという内容に嬉しくなった。ここで授業受けている間は飯に困ることはないらしい。
それに部屋には制服とやらが準備されているし、風呂と言う体を洗う施設もあるという。冬に寒い川で体を洗う必要がないだけで嬉しい。男子寮には俺が自由に使っていいという部屋まであって、そこに寝床まで用意されてあった。こんなに何でも揃っているだけで、騙されたのかもしれないが来てよかったと思う。
一通り説明した後はまた教室に戻ってきた。
「とりあえず、ここで授業受ければいいのか?」
「うん、そうだよ」
そう言うと、扉を開けて教室に入る。
「先生! これは一体どういうことですの⁉」
入って早々、金髪のなんか偉そうな女が怒っているのが見えた。
「何故私以外の生徒は貴族ではなく平民や、それどころか奴隷などなのですか⁉」
「何でって、それはこの学級は学園も半分非公認で運営している将来的に貴族の人たち以上にすごい才能を見せる逸材だが、それを成長させる環境に恵まれなかった人達を集めているからね」
「私は西の大国アーフィルドの貴族の娘セレアハートですわよ! それではまるで勉強するのに十分なお金がなかったようではありませんか⁉」
「でも事実君は本来ならこの帝都の中央学園の本校舎に入学するのは三年後。それでも他の人より早く入学したいって言ったから、特権的にこのクラスに入学するなら授業を受けてもいいという内容に同意したんじゃないか」
「だからって、ろくなメイドもいない! 服もない! 食事もない! そんな環境で一体何を学ぶというのですか! 生活がままならないのに何が出来るというのかしら!」
「生活する寮は用意しているだろう。それに部屋の広さは本校舎の生徒たちと違って一人部屋だし広いよ?」
「あの程度の広さで一体何を言って!」
「五月蠅いなあ!」
そこで、俺はあまりの言い草に腹を立てた。
「飯が無いだ⁉ 服がないだ⁉ 偉そうなこと言うなよ、寮にあっただろうが! それにメイドだ⁉ 生きるのにどうしてメイドが必要なんだよ! 必要ないだろうがよ!」
「メイドがいないと扉はどうしますの⁉ そんなこともわかりませんの⁉」
「扉ぐらい自分で開ければいいだろうか! それともお前そんなことも出来ないくらい馬鹿なのかよ!」
「何ですって!」
「ああ待って」
そこで、俺はたまらず仲裁に入る。流石に二人の件かがヒートアップしすぎだ。
「申し訳ないけれど、このクラスでは俺の方針でメイドは原則施設の維持管理とかのためだけで、自分の服を着るとか身の回りのことは原則自分でやるのが中心なんだ。あまりに授業次第で教師から入れてくれと言われない限り無理なんだ」
「何故ですか!」
「だけど、特別にこの条件を達成出来たら認めてあげよう」
そう言って、俺はアルバン君の肩に手を置く。
「彼に剣術で勝てたらいい」
「は?」
「は?」
「どうだい?」
「その程度のことで認めてくださるんですの。余裕ですわ」
「何だと!」
「じゃあ、決まりだね。午後の本校舎の生徒たちの授業が終了した後の時間に運動場を使わしてもらう様に手配しておくから、授業が終わったら集合ね」
「まあその前に、今日はオリエンテーションだ。この校舎を使うための色々な説明をするからね」
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