第1話 最初の出会い

 それを見た人は、空が歪んだと言った。それを見た人は、星が一瞬で動いたと言った。

 それを実感した人はいたのだろうか。しかしそれでも、現実として倭国は国ごと異世界に召喚された。

 そしてここにも、困惑した人が一人いた。

「oihsajlndsniowh;ajn.;sab!」

「なに?」

「uiwbjksauilguijkxjzkuilsgaublsab!」

「何言っているか分からない」

「jiobllknあ、あ。これで伝わるか人間族よ」

「分かります」

「そうか、ではここは何処か教えてもらおうか。ここは神聖なる森ではないようだからな」

「えっと」

 そう会話しながら、俺は目の前の少女の言葉に困惑するのだった。だって彼女は、天井から突然出現したから。

 俺の名前は笠松軍かさまついくさ、倭国天下原学園に入学してもうすぐ卒業を控える高校生である。

「倭国。聞いたことが無いな、人間族の国は神聖なる森の周囲には、オウギルス王国、サルバーン国、マナジャ国、ミセバジャ王国、そしてウィクリシン国しかないはずだが」

「一個も聞いたことが無い。第一、弓とかもっているのがおかしいし。目の前に天井から来たのもまるで魔法みたいだし」

「弓がおかしいのか? それに魔法が何かあったのか?」

「だって、天井から落ちてきたんだよ。天井に穴が開いているわけでもないのに。まるで魔法じゃん」

「魔法なんか誰でも使えるだろう」

「使えないですが」

「ん」

「ん」

 何か根本的に話が通じていない何かを感じ取った。

「魔法なんてほら、こうして使えるだろう」

 そう言うと、彼女は手に平の上で風を起こし始めた。何が怖いって、その風が緑色に見えることである。

「な、え、ええ?」

「どうした、何がおかしい」

「俺、使えないよ。魔法」

「何を言っているんだ、魔法を使えないなど。よっぽどの特異体質……む?」

「どうしたんですか」

「魔力が淀んでいるな。制御できるように施しをしてやるから」

 そう言うと、彼女は俺の手を握り始めた。

「ちょっと」

「ちょっと静かにしていろ。直ぐに終わる」

 そう言うと、彼女は俺の手に触れて何か唱え始める。

「joahlakl,oisahuo,woiqhwbkna,ohaujasa,szinohia」

「あ」

 体の中央から、なんだか熱くなるような感じがした。そして、何かが大きく溢れる様な感じが。

「まて、直ぐに制御しろ!」

「え?」

 ボンッ!

「おい! 何の音だ⁉」

「軍の部屋だぞ!」

「寮長すみません! 俺が物落とした音です」

「何だ、気を付けろよ」

 そう言って、寮長が遠くに帰っていく声を聞きながら、俺は部屋に向き直った。

「これ、どうしよう」

 そこには、驚く少女とものが散乱しすぎて大変なことになっている個室があった。

「な、戦略級の魔法使いだと。一体、何者なんだお前は……」

「俺が聞きたいよ」

 そう呟くので精一杯だった。

「報告しなさい」

「はい、本日零時丁度、倭国中の定点カメラ及び観測機器からアラートが発生。それと同時に倭国国籍を持つ外国在留者及び倭国の留学生らが本国に出現。まるで魔法のようだと報告があります。それと同時に、米国軍他外国籍の人たちも消失して経済産業省及び農林水産省や国土交通省などが各種人員の補填をどうするのかについての問い合わせに奔走中です」

「なるほど。概ね私の調べと同じようですね」

「しかし本当なのですか。あの方が、外国の」

「外国じゃないよ、異世界だ。間違いなく異世界の国の王族だ。むしろ私が対応している方がおかしいんだ。くれぐれも無礼を働かないでくれ」

「失礼いたしました」

 

 そう部下が謝罪すると同時に、笠松奥儀は扉を開けて部屋に入る。

「お待たせいたしました」

「かまわない。異世界転移をしたのは君たちの方だ。驚かない方が無理もない」

 そう言うと、目の前の初老の男性は立ち上がり礼をする。王族に礼をされるという事態に、唯の外交官である笠松奥儀はひやひやする。

「お顔をお上げください。私はあなたをお見かけした最初の相手であるだけで、あくまでもあなた方の言う天の国の者たちと限りません」

「いや、私は確信している。純白の下地に太陽をかたどった国旗。まさしく伝承にある天の国だと」

「そうだとしても、現状ここが異世界だという証拠は私があなたの言葉を最初理解できなかったことしかありません。これでは私の上司は理解してくれないでしょう。申し訳ないですが伝承についてもう少し詳しく、また今後の事についても少しでも話が出来たらいいなと考えております」

「もちろんですとも。私が協力出来る事でしたらなんでも協力いたします」

 これはとんでもない仕事になったと、俺に一任してきた上司を恨みつつ奥儀は交渉を始めるのだった。

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