第五話 ファンのいるパーティーに合流
「要するに、私が配信者になるまでついて来るつもりなんだよね」
「オフコース。勿論です」
「どうしてこうなったの」
私はあの後何度も逃亡をしようとした。しかし、敵のテイムしているモンスターの能力なのか私は何度も呼び戻されて結局それはかなわなくて私は根負けした。
そして、そのまま私は弥生に連れていかれる形で彼女たちのギルドがいる場所に向かうのだった。
「あなたは冒険者なのよね」
「そうです」
「普段は何をしているの」
「大学生です」
「大学生! そんなに大きいのに」
「へへ、そうですかね」
いや、身長もモデルさんかってくらい大きいし、顔立ちだって人形みたいに整っていて羨ましいのに。
それなのに彼女はそれを誇らしそうにするでもなく私の隣を歩く。
「さあ、着きましたよ」
「フロント・ホライゾン・カンパニー」
会社系ギルド、冒険者雇用会社としては最大規模の会社じゃないか。
会社自体がダンジョンの攻略やその情報の共有、研究、その他ダンジョン産の素材を使った道具の生産で収益を上げているトップギルドである。
私がいた零細会社なんか一息で潰せるような会社である。
「弥生、此処の社員なの?」
「社員っていうか内定インターン? が近いんですかね? まだ学生だから正式な社員じゃないですがもうチームは組んで冒険しています」
「普通に凄いじゃん」
こういった会社は将来的な冒険者として強力な戦力を欲している。
だから、強いなら大学生だろうと雇用するとは聞いている。
しかし、こう見ると何というか……。
「どうしました?」
「いや、何でもないよ」
「そうですか。じゃあ入りましょう」
そう言われて私はどんどん先に進む彼女の後を追って会社のビルの中に入る。
中に入るとまず目に入るのは広々としたエントランス。
床に使われている白亜の石は「夢に見た白銀城」で採れた白金剛だろうか?
他にも「植物に擬態したゴーレム」や「空色銀」で作られた階段の手すり。
あのライトは油が魔素によって自動補充されることで疑似的に「無限に燃える炎」を再現して作ったランプかな。
見ただけで一級品の道具だけしか置かれていないことが分かる。
「それじゃあ紹介します。ここが私たちのチームメンバーが今いる会議室です」
一流の品しか置かれていない廊下を歩いて案内された会議室は、いたって普通の会議室に見える。
この扉だってどうせ何かあるのだろうが。また白金剛なら凄いと思うが。
「じゃあ入りましょう」
そう言って慣れた手つきで案内をされると、そこには五人の冒険者たちがいた。
全員がパッと見て学生風のいでたち、というか制服を着ている人だっている。
そんな全員が、各々明るそうな表情や怖そうな表情をしている。
「皆さん例の冒険者さんを連れてきましたよ!」
「本当に連れてきちゃったんだね」
「はい! 見つけたからには何としてもです!」
「とりあえず自己紹介をしようよ」
「そうですね、自己紹介しましょうか」
そう言われて、弥生は私に顔を向けてくる。
「はい、夕凪千尋です。よろしくお願いいたします」
「職業も。これからパーティー組むんで」
「職業。えっと、会社員していました。今は会社が倒産したため無職です」
「「「 ズコー 」」」
そこで、魔法使い風の外見の人と小柄な姿の人、そして弥生がずっこけた。
「あのですね、職業って言ったらジョブを言うんです。どうせみんなそっちにしか興味ないですから。常識ですよ」
知らないよそんな常識。
「ああ、そうなのね。改めて、ジョブは開拓者やっています」
「開拓者ってことは、今は地図師とか?」
「いや、今も開拓者だよ。特殊な奴だけれど」
「ふーん。特殊な開拓者ってどんな感じなの」
「うーん。言っても信じてもらえないと思うけれど」
「どうでもいいだろうがよ」
しかし、そこで一人の男が割って入って来る。
「そいつがどれだけ強いのか知らないけれどよ、あの映像が本物かも怪しいだろうがよ」
「そうですね。現状鵜呑みにするには早計かと」
筋骨隆々な人はそう言って意見を言って、もう一人細身の男性も批判してくる。
良いぞ良いぞ。
「何が気に入らないのさ」
「これ以上人増やして給料の支払いとかどうするんだよ。ただでさえ今の人数だって満足に支払えていないのによ」
え?
「そんなにひどいの」
「いや、ちゃんと最低水準は払っているんですよ」
「冒険者の最低水準って最低額以下だから」
基本的に冒険者は会社が定める最低水準金額の五割増し程度はもらうのが普通だ。
それだけ危険な仕事をしているのもある。
「それじゃあいつ何か不測の事態が起きた際に困るとあれほど」
そう、何か予期しない事態が起きた際に困るのである。
「そ、そんなのいつ起きているんですか」
「今ですよ」
「今?」
そう言うと、細身の男性はこう切り出す。
「私はあの映像が本物か偽物か、それには興味ありません。ですが、正直あれほどに強い戦力が実力なら何としても欲しい人材です。ですが、今のチームに払う余力がない」
「ただでさえ五人だけでも言葉通りの意味での最低水準額しか払われていないからな」
「それは……」
おっとお、予想以上にブラックなチームに入ろうとしているのかもしれないな。
「やあみんな息災かい」
「社長、ノックもなしに入らないでくださいよ」
「社長⁉」
しかし、そこで予想外の人物が入って来る。
身だしなみは奇麗なのだが、何だか胡散臭い風貌の金髪の男性である。
しかし、それ以上にその後の言葉が驚かせてくる。
「何言っているんだ。パパに向かって」
「パパ⁉」
「はい。私の実父です」
「じゃあ、社長令嬢だったの」
「気にしないでください。娘が割と無茶苦茶なのはいつもの事なので」
そんな父親を弥生はねめつけるように見ているが、正直なるほどなって感じがしている。
「それで、社長様が何の用で」
「ああ、実は迷宮省の人が君に用事があるようなんだ」
「私?」
「入ってどうぞ」
そういうや否や、二人の女性が部屋に入って来る。
そして自分を押し倒さんばかりの勢いで話してくる。
「先生! まさか次の就職場所迷宮省じゃないとかないですよね!」
「お願いします! 迷宮省入ってください」
「蜜柑、葡萄、静かにしないか」
「ワオ、聞いてはいたけれど彼は人気者だね。これは娘もうかうかしていられない」
「彼? パパ何を言っているの?」
「ハハン。さては弥生気が付いていないね」
「何に」
社長さんが何か俺に言うように促すため、仕方なく自分の性別を明かすことにした。
「えっと、あの、自分男です」
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