第3話 仲間を探す 前編

「仲間を探す?」


 俺の提案に、きのこ人間の少女は不思議そうな顔をしている。


「どうしてよ?」

「理由は単純で、ここにいてもジリ貧だからだ」


 奴隷や盗賊が互いに顔を見合わせたり、不思議そうにしたりする一方で頭だった男は納得した表情をしている。


「そりゃそうだな。俺達盗賊も盗みを何度もするのは手に入ったとしてもその後ずっと何とかなる訳ではないからだしな」

「ああ、そう言うことだ」


 食料はいつか尽きる。武器はいつか摩耗する。限界は必ず来るのである。 もちろん俺の能力で作り続ける方法もある。 しかし致命的な問題がある。 この世界に存在できると確定した瞬間、同じ事が出来なくなるのである。


 例えば、弓矢も「この世界にない形の弓矢」を作ろうと思えば出来る。 ただし、奴隷達が「この世界の材料で再現をする」とどうなるか? この世界に存在したことになってしまい、俺の力で新しく作ることができなくなってしまう。


 極端な話、無限にアイデアさえあれば構造が違うからと色々な食料も武器を大量に作ることも出来るだろう。でも、何時までも作り続けられるほど万能でもないし、あくまでも能力である以上疲れるまでしか使えない。 たかが使えるか自分でも知る由もない武器のために使うなんて馬鹿げているから、俺はそんな使い方はしない。


「出来るなら、自給自足だけは出来るようにしないと話にならない」

「なんで? 必要なものは盗めばいいと思うぞ?」


 狼娘の少女が一周遅れの疑問を挟むため、俺は盗賊の一人に質問する。


「盗賊として意見を聞きたい。お前達は何度も同じ村を襲うような、同じ村だけで盗みを繰り返すようなことはするか」

「んー? 俺達はしないな」

「まあそうだな」

「普通に同じ村だけで襲っても意味ないしな」

「だな」

「なんでなんだ?」


 鳥少女の疑問に、僧侶の娘が答える。


「何度も同じ村を襲えば、冒険者達が討伐に来る。ですよね」

「ああ、敵も馬鹿じゃない。単純に何度も同じ場所を襲われて何も対策をしない事はありえないんだ」

「対策って、何するんだ?」

「冒険者が討伐しに来る、まあ要は雇われるって事だな。他に何が思い浮かぶ」


 そう質問すると、色々な意見が出る。


「村にバリケードを作るな」

「襲われないように道を変える……とかですか」

「そもそも此処に襲撃するとかじゃないかしら」

「その通り、ただ単に俺達が襲ったところを返り討ちにする以外にもこれだけ相手ならするだろうという事はある。それに、欲しい物を隠すっていうこともありえる。略奪に行ったのに何も手に入らないって事もあるってことだ」


 これが、俺達の今の生活がいつかはジリ貧になるという話に繋がるのである。 今は良くても、いつかは駄目になる。


「それで、何が言いたいんだ?」

「盗める物は盗めば良い。だが、自分達で作ることが出来る物なら作った方が安上がりだし、襲われるリスクも少ない。ただ、その為には農業や工業に長けた新しい仲間が必要だ」


 だからこそ、作れるものは自分達で作りたい。 武器も、食料も、あらゆる物を自分達でどうにか出来るならば。


「じゃあ、せっかくだから迷宮に拠点を構えるのなんかどうかしら」


 そこで、雪女が突拍子もない意見を言い出したのである。


「お前、何言っているのか分かっているのか?」

「あら? 変かしら?」

「迷宮って、今はどんな迷宮も冒険者組合の管理下にあるんだぞ。もしくは国とかの管理下に」

「でも、まだ見つかっていない未開拓領域を探せば良いのでは無いですか?」


 !


「お前、頭良いな」

「お褒めに預かり光栄です」

「ど、どういうことだ!」

「教えるんだぞ!」


 鳥少女と狼娘の二人がそもそも何を言っているのか分かっていないようなので、説明をする。


「先ずだが、俺がどうやって新しい仲間を集めるつもりだったか。わかるか」


 そう聞くと、皆が首をかしげる。そりゃそうだな、分かるわけが無いのだから。 

 その手段がある事を伝えて、万が一にも出来るようになるなんて事があると俺が出来なくなるから誰にも言っていないためである。


「わからないのだ!」

「教えてほしいぞ!」

「まあ、こうするんだ」


 そう言って、俺が指を鳴らすと空間が一瞬でバグって変化する。


「此処は?」

「王都の城にある宝物庫。俺が自分の能力で可能な移動手段の一つで移動したんだ」

「はあ!?」


 盗賊の男が驚きの声を上げる。

 まあ俺もこの移動方法は正直あまりやりたくないのである。 

 単純に解明されて使えなくなるのもそうだが、この移動方法はどんな場所にも移動できる代わりに、その場所に何がいても何もできないまま敗北してしまう可能性もあるのである。 だって「存在しない場所に存在したことにする」からである。  

 他にも使いたくない理由はあるのだが、それでもそれ以上に強力な副次的な出来ることがあると踏んでいるため今回は使うことにした。


「例えば、じゃあこれでいいか」


 そう言って、俺は何か強そうな石を手に持つ。


「帰るぞ」


 そう言って、俺は皆を元の洞窟に連れ帰った。


「えな、え?」

「凄い、嘘でしょ」

「こんな事が出来るんですか!?」


 盗賊、きのこ人間、冒険者が驚きの声を上げている中で気がついた淫魔の少女は指をさして聞いてくる。


「えっと、その石」

「ん。あの宝物庫から盗んできた」


 そうなのである。宝物庫から、盗むことは難しくないのである。 こうして石も、正確には欲しい物がこの場に俺達と一緒に存在していることにすれば。


「だから、これを俺は今度は仲間にしたい奴らに対して使用する。鉱山人でも、森人でも、他にもスライム人間、植物人、半人半妖、鬼、巨人、小人、炎人、蜥蜴人、幾らでも特技があるからこそ欲しい種族はいるな」


 その時の俺の顔は、きっととても醜い顔をしていただろうなと思う。 捕らぬ狸の皮算用と言われればそうだが、もうこれらの種族は手に入ったつもりだからである。


「ふふ、これはとても広い未開拓領域を見つけないとですね」


 雪女だけが嬉しそうにそう言って同調してくる。


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