第26話 9期生最終試験2
「それで、方向はどうするんだ。これで合っているのか?」
『目視は出来ないけれど、強い魔力を発している変なものがこっちの方向にあるのは間違いない。多分偽物ではないと思うけれど』
「それで、敵って何なの。今の所何も見えないけれど?」
「待って、何か後ろから来ている」
何か片手程の大きさの道具を見つめながらアクモシスが声を上げる。
『! みんな急いで! レイス先生だ!』
「レイス先生⁉」
「待て、敵役ってもしかして」
「ナインさんやアルバン君の先生たちですか」
それに気が付いた時、俺達の頭上に何か魔法が出現して、そこから大きな岩のようなものが落ちてくる。
「全員大丈夫⁉」
「こっちは平気です!」
「こっちも、でも変だ!」
「どういう事だ」
「この岩、魔力を持っている! 普通の岩なら微笑過ぎてこの計測器では測れない程度しかないはずなのに!」
『そりゃそうだよ! だってレイス先生が目視出来る程度の距離で転移魔法を使って来たなら!』
その岩は動き出して、そして人のような形になったかと思うと、俺達の方を見据えた。その数、四体。
『先生が個人で所有している魔術人形ゴーレムを転移したんだよ!』
そう言うと、ナインは魔法を発動魔術人形ゴーレムの足元に魔法を放った。
「沼の地形変更。そうか、こんな大きな体でしたら簡単に沼から抜け出せなくなるのですね!」
『急いで! 魔術人形ゴーレムはその見た目によらず使い捨て! 下手したら大爆発するよ!』
「嘘だろ!」
警告通り急いでナインの走る方向に向かったが、俺はその時何か嫌な予感がした。魔術人形ゴーレムたちの顔が一瞬回転したかと思えばナインの方向をすべてが見つめているのを見て。そして口に何か魔力を集めているのか光っているのを見てしまったから。
『え?』
「あぶね!」
俺が一瞬で翼を展開してナインを救出した時だった、その後を光線が通り抜けていったのは。そして、地面の抉れて焼けた大地が露出した恐ろしい光景を見たのは。
「魔術人形ゴーレムってこんな攻撃してくるのかよ」
『ありがとう、アルバン君』
「ああ、でもこんな攻撃した後ならもうしばらくは平気だろ」
『! そんなことない! そのまま飛び続けて!』
「え?」
その時だ、後ろから先ほどのような光線が飛んできたのは。
「何で⁉」
『魔術人形ゴーレムは作るときに大量の魔力をあらかじめ蓄えておくの! あの程度の魔法なら三百発以上は撃てる!』
「そんな無茶苦茶な!」
二人で逃げながら、俺達は空を飛んでいた。
一方その頃、地上。
「残念だね。確かにバリアは俺の剣で貫けないから守るのは最適だけれど、おかげで移動できなくなっちゃったね」
「アクモシス君、ごめん」
「いいよ。でも、早く帰ってきて、アルバン君」
「良い剣筋だ。セレア。嬉しいよ、普段より何倍も美しい」
「エラ先生。本当に戦わないといけないんですか」
「ああ、何せこれは最終試験。結果を教師が近くで確かめるのは当然だろう」
戦闘のできない二人にエボルト先生が、セレアハートにエラ先生が対峙していた。
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