第17話 悪魔契約1
『力が欲しい?』
そんな幻聴が聞こえていたのは、中間試験が終わった頃からだった。最初は別に気にすることはなかった。しかし、その声が徐々に大きく、より明瞭に聞こえるようになってきたのは気のせいではなかっただろう。
『正直になりなさい、あなたは力が欲しい。違う?』
だって、聞こえるのは何時でも私が他の人たちと違いを感じる時だったから。
『別に彼らはあなたを優しく受け入れてくれると思うよ?』
そんな訳ない。
『貴族を基準にしちゃだめだよ。いつでも値踏みするような人達と一緒にしていたら気が狂っちゃうよ』
だがしてしまう。貴族の中では力のない下級貴族に生まれたからこそ、私はここで力を見せつけないといけない。
『それじゃあ結局彼らを受け入れられないのはあなたの問題じゃない』
そうだと思う。明らかに彼らはこの半年程度で私を追い抜いてしまう程度に強くなった。試合ではなく、実戦だったら間違いなく負けていただろう。自分が死ぬという形で。
なのに、私は彼らの強さを認められていない。
『どうするの、期末試験はこれから半年後だよ?』
期限は半年。
『それまでに何とかしないと、あっという間にもっと追い抜かれちゃうよ? 大丈夫?』
「五月蠅いですわ!」
部屋の中で私は大声で叫ぶ。
「何なんですのあなたは! 知ったような事ばっかり言って! 結局あなたは何がしたいんですの⁉」
『力が欲しくない』
「はぁ⁉」
『私が力をあげるよ。あの人達に追いつく力』
「はぁ⁉」
その言葉に私は怒りを露わにした。
「そんな簡単に追いつけるはずがないこと私が一番に知っているんですわよ! そんなこと!」
『簡単さ、力が欲しいと望むだけで良いんだ』
「……」
『さあ、一回だけで良いんだ。騙されたと思って願ってみなさい』
「私は、力が欲しいですわ!」
『契約成立だ』
「契約? まさかこれ⁉」
その時、セレアハートは意識が深い闇の中に落ちて行くのを感じた。
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