第6話 ドラゴンとの決闘1

寮で生活するという制約はあるのだが、別に外出が規制されているわけではない。夕飯いるかいらないか確認をする時間までに寮に戻りさえすれば、別に外出は自由だ。その代り学園の門限より圧倒的に早い上に何時か朧気にしか覚えていないために辛いものがある。

「また随分と立派に刃こぼれしたな、坊主。一体どんな奴と戦えばこんな頻繁に刃こぼれするようになる?」

「そ、そうですかね」

「とりあえず今回も修繕費分として3000ゴルドじゃな。練習用の剣じゃからこんな物じゃが、そろそろレンタルばっかりじゃなくって一本買ったらどうじゃ?」

「それが出来たらいいんですけれど……お小遣いそんなにある訳じゃないので……」

「じゃが、もうレンタル料金の方が高くついておるぞ? 帝都の中央学院にいるなら剣の一本や二本こんな店で買わなくっても何とかなるだろう」

「いやあ、あっはは。俺そんなにお金ないものですから」

 そう言って、修繕費のお金を渡して剣だけ新しいのをもらうと足早に退散した。

「親父さん、またいつもの坊主ですか」

「ああ、幾つか店を見てきたって言うが、ここが一番いい店だって言ってレンタルしている例の中央学院の奴だよ」

「変わっていますね、うちみたいな店帝都探せばいくらでもあるのに」

「それでも、うちを一番だって言ってくれるなら客として大切にはするさ、少しぐらい値段吹っ掛けても罰は当たるまい」

「親父さん刺されないでくださいね」

「はー、今月もギリギリ。何とか中間試験までには一本ぐらい剣買っておかないといけないし、先生に頼んで俺も迷宮ダンジョンに潜るか?」

 そんなことを考えながら、俺はお小遣いとにらめっこしていた。

 学院に来てもうすぐ6か月になる。中間試験も近い。この間中間試験の内容が発表されたが、座学と戦闘と、個人による任意の実技試験だそうだ。

事前に戦闘は出来ないからとマルクスは全員に戦闘する上でのアドバイスをすることで免除。また、戦闘フィールドの整地を買って出ることでアクモシスも免除となった。

 要するに実際に戦うのは俺と、セレアハートと、ナインだけ。

 セレアハートは分かっている。剣を使うから、俺に近い。それに、最近迷宮ダンジョンで魔剣とかいう超強い武器を手に入れたらしい。俺も先生に迷宮に潜りたいと頼んだのだが、「俺の雇い主が迷宮ダンジョンには潜るなって言っているんだ。ごめんな」と言われてしまい断られている。それに、最近ナインはレイス先生と強い武器を作ってもらう代わりになんか働いているみたいだし、俺だけちょっと遅れている。武器の質で明らかに遅れそうになっている。

「何とかしないと……」

 そう思っていた時だ……。

 リンゴーン、リンゴ、リンゴーン。

「警鐘⁉」

 街に鳴り響く警鐘。直ぐにその音が鳴ること自体に恐怖感じて怖がり始める市民たち。そして治安維持に努める兵士たち。しかし、俺はそれに違和感を覚えた。授業で習った、帝都にはいくつかの警鐘があり、そのなり方のパターンで、火事なのか、地震なのか、それとも襲撃なのか分かるようにしている。

 しかし、このパターンは……。

「どれにも該当しない……つまり」

「ドラゴンだ! ドラゴンの襲撃だ!」

 パターンを把握して鳴らす暇もないほどの最悪の事態が起きていると。

「!」

 どうする? 俺に何かできるのか? ドラゴンに近づくことは簡単に出来ると思う。しかしその後攻撃出来るのか? 何より、ドラゴンはその種類によって沢山の属性を持つ。今回のドラゴンが相性のいいドラゴンとは限らないのでは。でも……。

「行こう!」

 そう思った俺は、魔法を発動した。

「な、何だあれは!」

「どうした」

「子供が、子供が空を飛んでいるぞ!」

 とある兵士が見た記録である。それが最初に観測された、少年が一人、剣一本を片手に、ドラゴンに向かって果敢に挑む様子だと。

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