第29話 短き戦争1

「何が起こっている! 説明しろ!」

 ガリオン国先行侵攻軍総大将ウズベルは、その報告に怒鳴り声で返す。しかし、返ってくる返事はいつも通りである。

「で、ですから我が首都サフジールの目前の未確認の軍隊が陣地を敷いて集結しているとの報告があります。また、オモジャ山を攻めるゾウルバン国の軍隊ではないと確認も取れています」

「では何処の軍隊だというのだ! グランバもネガジャもましてやロリアンも一夜の間にわが軍を素通りして首都目前に陣地を構えることなど出来ないはずだ!」

「て、敵より間もなく魔法による通信が行われます!」

「ええい!」

 そして、全員がその通信の言葉に耳を傾ける。

この世界の通信は、幾つかあるが戦争では巨大な水球に鏡に映す如く光魔法を使って姿を映すのが主流だと言われた。まあテレビに映すのと大差ないだろう。そんな気持ちで、彼女は話を始めた。

「初めまして、私は倭国の自衛隊一時所属の一宮神楽という者です。自衛隊の総大将、並びにガリオン国国王に告げます。投降してください。そうすれば攻撃は致しません。事前に伝えた通り倭国の降伏の仕方の通り白い旗を上げれば降伏とみなします」

「敵国の降伏の仕方に従って降伏しろだと? 馬鹿な事を言うな。直ぐに通信をつなげ」

「ですが、ガリオン様が現在通信中です。内容は、全軍に侵攻しろと。また倭国に首都を包囲する軍を撤退させてこの謝罪と賠償を行う様に言う内容でして」

「ならば、進行するまでよ。全軍、とつげ……」

『砲撃開始!』

ドガン!

「何だ⁉」

 聞いたこともない様な音が遠くから聞こえた。

「何だ、今の音は」

「分かりません。魔法にしては音が大きい」

「し、失礼します!」

 そこで、慌てた兵士が部屋に入って来る。

「何事だ、騒がしいぞ」

「ですが、緊急事態です! 第一から第三歩兵隊が未確認の攻撃で半壊しました!」

「何だと!」

 そこで、新しい伝令兵が入って来る。

「失礼します! 第一から第五歩兵隊壊滅! 第六歩兵隊も間もなく壊滅するかと!」

「第九歩兵隊まで壊滅しました!」

 続々入るその言葉に、総指揮官として眉間にしわを寄せた。

「な、何が起きている⁉」

「本当に、魔法のおかげで効率的に作戦を遂行出来るわ」

「なあ、何時まで転移魔法広げておけばいいの?」

「もうそろそろ宇治院君から敵がどのくらい死亡したかの報告来るからちょっと待って。何々? 六割片付いた? もうじゃあ攻撃いらなくない? なに⁉ まだ進行中⁉ 馬鹿じゃないの敵?」

 そんな声を聞きながら、俺は頭を抱えていた。

「大丈夫、軍君」

「ああして人を殺している兵器、俺が昨日の晩に輸送した兵器なんだよなって」

「それは」

「もしかしたら俺がやらなければこんなに効率的に数千人数万人の人が亡くなる事は無かったのかもしれないけれど、でもそうしたら今度は倭国が攻められていたし辛いなって」

「……」

 一宮が静かに俺の背中を叩いてくれた。

「軍君、敵国の首都に転移魔法つないで。もう一度今度は私たちが移動するよ」

 その言葉に、重い腰を上げた軍が魔法を使用した。

「て、撤退しろ! 今すぐにサフジールまで戻るぞ!」

「で、ですが! 今戻っては」

「このままではこの攻撃を首都が受けるのだぞ! その怖さが分からぬのか!」

 しかし、その言葉はそう長く続かなかった。

「き、緊急の伝令です」

「なんだ⁉」

「さ、サフジール陥落。厳密には、わが軍の壊滅を見た国王が威嚇射撃に怯え切って敗北を認め、停戦協議に入ったようです」

「そんな……」

 その現実を受け入れることが出来ないウズベルだったが、現実はそう甘くない。

「投降しろ」

 自衛隊が陣地に入って来たのだった。

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