第17話 実務者協議1

「皆様、本日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます」

「それで、突然わしらを呼び出して一体何をするつもりじゃ」

「私達水棲種族にまで陸に上がってお話しするように要請するってことは、それ相応に重要な話なんですよね?」

 迎賓館、赤坂離宮。ここに、異世界に存在する各国及び種族の王族並びに外交官や族長たちが集っていた。

・オルギウス王国国王、バステル・オルギウス。そして宰相ザリス。

・森の民族長、ソリエール・ミフォール。

・グランバ国代表外交大使、アバンド・テネトス。通称巨人の民。

・オドン島国族長、ゼリガス・オドン。通称海の民。

・ロリアン王国第一皇子、マシェール・ロリアン。通称小人の民。

・ミドリガス族族長、セレーネ・ミドリガス。通称人魚の民。

・鉱山の民、ドワン・ウドーフ。

・ネガジャ国、外交大使。スワン・ボドウジャ。通称砂の民。

「ケッ、話が出来ないからって森の民の指輪をはめないといけない話し合いなどに何故我々が参加しないといけないのか」

 ドワン・ウドーフがそうケチをつける。

「ドワン慎みなさい。彼の者たちは森神に認められた者たち。その者たちとの外交の場に国を持たない私たちが呼ばれたのですから」

「ですが、私たちとしてはこの辺りは何もなかったはずの地域のはず。それが突然国ごと出現したと言われても信じがたい。当然、あなた方の事も」

「その辺を含めて、私たちは皆様と情報共有、並びに将来に向けての話し合いをしたいと考えております」

 笠松奥儀はそう口を開くと、話し合いを始めた。

「まず、皆様に早速来ていただいた以上こちらでのおもてなしとして一週間程滞在して、この国について知って頂こうと考えております。そのために多少この国の法律には従っていただくなど制約はありますが、皆様に我が国と友好的な外交を結びたいために必要な事ではないかと考えております」

「あの、少しよろしいでしょうか」

「はい」

 そこで、セレーネ・ミドガルズさんが挙手をする。

「私たちは地上では人魚の民と呼ばれるように海中で過ごす種族です。地上の事に疎くて申し訳ないのですが、この国はどの程度凄い国なのでしょうか」

「どの程度と言われると……」

「少なくとも、俺達にはあの船は造れないな」

 アバンド・テネトスが困っていると、そこでゼリガス・オドンがそう言った。

「ここにいる奴ら全員が見ただろうが、全長二百メートル程度の船に乗って来たと思う。しかも、魔法を使った様子がないのに数十キロメートル出して船は移動していた。そんなの俺達には絶対に造れない」

「それがどうしたって言うんだ。お前たちの魔法が大したことじゃないって話じゃなくってか」

「じゃあ鉱山の民は造れるのか? 俺たち以上の船を」

「そいつは……」

「それに、私からも良いでしょうか」

 そこで、アバンド・テネトスが手を挙げる。

「今回巨人族の代表として私が呼ばれましたが、それは私が一番外交官の中で身長が人間族に近いからです。それでも乗り物には困りまして、皆様とは違い飛行機と言う乗り物に乗ってきました」

「飛行機?」

「鉄の鳥とでも表現すればよいでしょうか、要は空飛ぶ乗り物です」

「空とぶだあ。そんなものがある訳ないだろ」

「それがあるのですよ」

 そう言って、アバンドは胸元から何か石を取り出す。

「恐れ入りますがそちらは?」

「記録結晶と呼ばれる石に対象が見た風景などを覚えさせる魔法道具マジックアイテムです。こちらは鉱山の民の方なら見慣れたものでございますよね」

「ああ、当然。俺達が輸出しているものだからな。製法は秘密だが」

 そう言われた後、アバンドは石に何かしていると、突然石から立体映像が流れ始める。

 そして、明らかにアバンドが飛行機に乗ってから飛行機の中で撮影したであろう空からの風景が数分間にわたって流れる。全員が食い入るように見ていた。

「どうでしょうか」

「「「……」」」

「これが、倭国の力です。誰も聞いたことのない、見た事もない、雲の上の景色です。これが移動手段として一般化している」

「すまないが、聞きたいことがある」

 そこで、マシュール・ロリアンが話始める。

「ずっと気になっていたのだが、この世界では魔法は無いのか? 新幹線と言ったか、巨人の民が使った移動手段とは違う物に乗ったが魔法を使ったようには見えないのにたいへん静かで快適だったのだが」

「それについては、私から説明しよう」

 そこで、オルギウス王国が入って来る。

「少しばかり倭国について勉強させてもらったが、この国では。いや、この国があった世界自体では魔法は本来空想上の概念だったようだ」

「魔法が空想?」

「ああ、魔法など存在しなかったらしい」

「は? 魔法が無いだと。随分と変な国だな」

「そうとは限りませんよ」

 ドワン・ウドーフが鼻で笑う横で、スワン・ボドウジャが話を始める。

「飛行機と言う空飛ぶ鉄の鳥や、新幹線とやらにオドン島国の族長が造れないと認めた鉄の船を造る技術があるのですよ」

「それは、魔法で造ったのではないですか。地上の民より優れた魔法で」

「だから、その魔法が無いと言っているのではないですか」

「ん? ん……ん⁉」

 そこで、鉱山の民や人魚の民がようやく気が付いたが他の人たちは恐れていた。

 代表して、巨人の民が聞く。

「どうやって、造ったのでしょうか。あのような乗り物を」

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