第14話 中間試験3
さっき試合を見た事で、ナインの魔法の怖い所は分かった。
正直、俺は攻撃をしなければいけない手段が付与魔法エンチャントである以上接近戦でしか攻撃手段がない。セレアは失敗していたが、遠距離からの攻撃手段があれば最初に地形を変更されていないことを確認した後に攻撃すれば安全に攻撃出来たはずだったのだ。
「……」
相手も俺をしっかりと見つめている。
「はじめ!」
広瀬先生の声が聞こえる。それと同時に、俺はマルクスのアドバイス通りに……
『ナインさんは間違いなく攻撃手段を持たない以上、どうにかして移動手段を封じようとしてくるはずです。だから、何としても捕まらないようにして下さい』
思いっきり空中に飛び出した。
「まずは距離を取って、そこから攻撃を仕掛ける!」
分かっていたとはいえ、相手は予想通り空に飛び出した。
『さっきの試合を見たなら、沼による地形変更魔法は警戒するはずです。そして、攻撃手段を持たないナインさんに対して、アルバンさんは付与魔法エンチャントによる攻撃を持っているので接近してくるはずです。なんとしても近づけないように対策してください』
近づけさせないように対策しろだなんて無茶を言う、そう思ったが実際私は攻撃に使える魔法を修得していないために地形変更魔法で邪魔することしか出来ない。
「うお、アブな!」
実際、今も岩山を大量に出現させて何とか耐えているが、限界はある。
「そこか!」
一つ、地形変更魔法は他の魔法と同じくあくまでも「私の見える範囲にしか出現できない」ために「移動しながら出現させたりさせなかったりしてもいつかばれてしまう」のである。
「危ない!」
だからこそ、時々召喚魔法で鎖を出現させて邪魔もしているが移動速度が違いすぎる。
「やられた!」
だから、私は地形変更魔法で洞窟を出現させてそこに逃げているのを繰り返している。こうすれば、一応敵の目を欺くことは出来る。離れれば時間が出来るから回復も出来る。こっちもアルバン君を見失ってしまうが。
だが……じり貧だ。
アルバン君と私、明らかに魔力の保有量は私の方が多いだろうが、魔法を使った回数は多い。このまま何も変化が無ければきっと私が負ける。
だから、私は勝負に出ることにした。
「さて、今度はどこから出てくるのか」
二回戦戦わないといけない以上、そろそろ決めないと次の試合の魔力が足りなくなる。それだけは避けたいのだが……。
「いた!」
岩山のとある一つにナインはいた。なので俺はそこに突撃した。それと同時にナインが魔法を発動する。
「……」
「負けるか!」
召喚魔法による鎖が大量に襲ってくるが、俺はその間をかいくぐり接近する。そして、付与魔法エンチャントをして攻撃を決めようとした。
「……!」
「金属の壁⁉ でもこれなら!」
召喚魔法で金属の壁を出現させられて防御されたが、この厚さなら十分壊せる。そう判断した俺はそのまま壊すことにした。
「これで! おわ……」
その時だ、壊した壁の中から鎖が出現して俺を捕縛したのは。
「嘘だろ! 動けない!」
縛られて動けなくなった、その状態で見上げたナインは何か魔法石を持っていた。
「分かった! 降参だ!」
「勝者、ナイン!」
どこか遠くから広瀬先生の声が聞こえた。
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