幕間 心を乱すセレアハート

「狙いが甘い!」

「イッ!」

 剣先で剣を弾かれると、次の攻撃で私はそのまま剣を放してしまう。そして、相手に剣を突き付けられたまま私は負けを認める。

「どうした、セレア。お前らしくないぞ、迷宮ダンジョンに近衛騎士たちと潜った時のお前はどこに行った?」

「すみません」

「剣に迷いが出ている。強さは確かなだけにお前の強さに剣が振り回されてしまっている。武器は道具であると同時に大切な相棒だ。その相棒が上手に扱えていないのは、お前にも問題があることを表しているんだぞ」

「ごめんなさい」

「少し休もう、今のままやっても駄目だ」

 そうして、休憩に入るが私の心が晴れることはなかった。むしろ、ますます心は深く闇の中に囚われてしまったような感覚になる。

「先日のアルバン君と言ったか」

「!」

「やはりか。気にしているのはその事か」

「それは」

「私は素直にすごいと思ったぞ。私が史上最年少でドラゴン討伐をしたのは19歳7か月の事。子供のドラゴンとはいえ、それを五年以上も大幅に更新したのは近衛騎士達の中ではすでに大きな話題になっている。文官の中には、ドラゴンが弱っていたのではないかとか、世迷言を言うやつらもいたがな」

「エラ先生、練習再開お願いします」

「駄目だ」

「ですが」

「駄目だ」

「何故ですか!」

「今の心を乱されているお前では練習しても力を得られん」

「それは」

「まずは己を律する訓練をしなくては駄目だ。今日はこの後素振りをしよう。アルバン少年の事を考えなくて済むように、忘れられるようにな」

「はい」

「それに、中間試験は近いのだぞ。大丈夫か?」

「大丈夫です」

 そう言って私は早速素振りを始めるのだった。アルバンに勝つために。

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