第10話 オークション

 それから、俺はせわしない毎日を過ごした。まずは帝都の近衛騎士から都市防衛に貢献した褒章の授与式に参加した。そして、史上最年少でのドラゴンの討伐として年齢確認のために魔力から生まれて何年経っているかの確認とやらをさせられた。

「それでは、肉や内臓が200万ゴルド、爪や鱗が150万ゴルド、肺が80万ゴルド、翼が60万ゴルド、竜胆が200万ゴルド、また、他に値段が付けられたものが合わせて120万ゴルド、ここに銀行開設の料金を引きまして、800万ゴルドが子供のドラゴンの取り分となります。大人のドラゴンは本当に取り分を放棄されるという事でよかったでしょうか?」

「はい、問題ありません」

そして、俺は帝都の銀行と俺が仕留めたドラゴンの公開オークションに参加していた。手っ取り早く言えば、色々なドラゴンの肉だの肺だの欲しがる人はいるようで、それを少しでも高く捌きたい銀行が仲介してオークションをしているのである。

 結果として面倒なこのイベントに参加しなくてはいけなくなり、俺は学校を休んでこのオークションを観覧して、そして同意書にサインしていた。

「では、これで本件は終了とさせていただきます」

「あの、少しいいですか」

「はい、何でしょうか」

「ここにいる人たちの中に、ミスリルを調達できる人っていますか。いなければ自分で探すので問題ないですが」

「それは勿論いらっしゃいますとも。ここには帝都でも一流の商人たちが集まっていますから。因みにご要望の理由は」

「あの、学院でそろそろ中間試験が近いので新しい剣が欲しいのです。だから」

「それならわたくし共でご用意いたしましょう」

「待て! 私たちがご用意する!」

「それよりもミスリルの剣でしたら私共が直ぐにご用意できます!」

 俺が言うや否や、観覧席でそんな言い合いが始まってしまう。

「どういたしましょう。ミスリルの剣自体をご用意しても構いませんが」

「いや、ミスリルさえあればいいんです。剣を用意してもらう武具店は決まっているので」

「なるほど、因みにどちらのお店でしょうか」

「帝都53番通りのデズリッグ武具店です」

 その言葉に、一瞬の静寂が訪れる。

「あの、ここにいる職人や商人でしたらそんな53番通りの職人程度より何倍も腕の良い職人は見つかると思いますが」

「なるほど、つまり俺の贔屓にしている武具店は大したことがないと」

 そう確認をとるや、俺は先程書いた同意書を持つと燃やした。

「あ、ちょっと!」

「不愉快です。銀行も作らなくて結構ですから一旦預かってもらっているドラゴンの死体返してもらっていいですか。自分で売却する相手は見つけますので」

「お、お待ち下さい! それでは」

「嫌なら撤回してください。俺を貧乏人だと門前払いした武具店が贔屓にしてくれている武具店より何倍も優れている武具店だと発言したことを」

「お、お許しください。申し訳ありませんでした」

 とりあえず、燃やすのはやりすぎたかなと反省しつつ、俺はもう一度同意書にサインをして処理を終えるのだった。また、これを機に帝都の有名武具店では客を見た目で判断するのを注意するように徹底され、高級な相手の実力を測る水晶が出回るようになったという。

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