第5話 アルバンが成長する一方で……

「はい、アルバン君テストです」

「ありがとうございます」

 小テストが返される。点数は50点。だいぶ前よりルーン文字や共通語のテストの得点は上がってきたように思う。

「次、セレアさん。満点です」

「当然ですわ」

 そう言うと、セレアがこっちにテスト用紙をひらひらと見せびらかしてくる。嫌な奴、と思っていた時だった。

「次、ナインちゃん。ナインちゃんも、今回が初めて小テスト満点ですね。おめでとうございます!」

 レイス先生がそうほめると、セレアは驚愕したような表情をしているが、マルクスとアクモシスは拍手を送っている。そして俺は……。

「なあ、勉強教えてくれ!」

 そう言っていた。

「……(ワナワナ)」

「頼む! 今習っている授業でどうしても魔法について教わらなきゃいけないんだけれど、俺点数悪いんだ! だから教えてくれ!」

「……(ソワソワ)」

「アルバン君、ナインちゃん喋られないから一方的に頼むだけじゃなくって、ちゃんとお返事待ってあげなきゃ」

「そっか、すみません」

「それでナインちゃん、お返事はどう?」

 そう聞くと、ナインは最近自分で買ったらしい黒板にチョークで文字を書いていく。

『大丈夫です』

「本当か! ありがとう!」

「……(プルプル)!」

「ちょっと、ナインちゃんびっくりしちゃっているから落ち着いてアルバン君」

「……」

 そんな様子を、一人の少女だけが面白くなさそうに見ていた。

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