第11話 神聖なる森3

「何だったんだ」

「おい」

 

 慌ててミレスと名乗った女の子から離れた時だった。突然三人組の男たちに話しかけられたのは。

「お前が噂の戦略級魔法使いとか言うやつか」

「恐らく」

「だったら先に言っておく、この森から出て行け」

「はい?」

「俺はお前を認めない。族長が良いと言っても、ミレスちゃんと結婚するのはこの俺だ」

「はぁ、それはどうぞ」

 もう帰ろうとした。その時だ。肩を掴まれて呼び戻される。

「おい、待てよ! 逃げるな!」

「何ですか」

「だが、このままでは族長の意見に従ってお前を持ち上げる奴の方が多くなる。だから俺と勝負しろ」

「はあ」

 そして、なんか面倒だなと思いながらも俺は三人からの勝負に参加することにした。てっきり魔法で勝負するのかと思っていたが、カードゲームのようで俺は安心した。

「エレメント麻雀は、『木』『火』『土』『金』『水』の五つの要素に一から十五の数字の書いてあるカードと、数字の無い『光』と『闇』のカード五枚ずつの計八十五枚で行う麻雀だ。最初の手札は五枚。ここから山札から一枚ずつ引いていき二枚の雀頭に、三枚のカードで刻子か順子を作りその役の強さで一番を決める。ルールは簡単だろう」

「雀頭は数字でもエレメントでも何か同じ要素のあるカードがペアになっていればいいのですか」

「ああそうだ。問題はあるまい」

「まあ、はい」

「ではお前が一度でも負ければもうミレスちゃんにちょっかい出さないと約束する。それでいいな」

「はい。と言うか、俺別にちょっかい出したつもり無いのですが」

「よし、ではカードを配るぞ」

 俺の意志などまるでないかのように、勝手にゲームが始まってしまう。

「さて、手札は」

「ふむ」

「なるほど」

「では、この時点で手札の出来上がっている者は手を挙げなさい」

「はい」

 俺は手札を見せた。全部のカードが木の要素のカードで、数字は六から十の五枚だ

「ピア・ロード」

「それに、テスペラウダだと」

「ふふふ、やるじゃないか」

 三人のうち二人が何か驚いたような顔をしているが残りの一人は余裕そうな顔をしている。

「この勝ちは君に譲ろう。だが、次はこうはいかないぞ」

 そう言って、シャッフルしなおされたカードがまた再び配られる。

「出来ました」

 俺が宣言して手札を見せる。木、火、土、金、水のカードに、数字は全て八。

「テスペラウダ」

「今度はピア・テールだ」

「ほほう……」

 三人全員の顔が引きつる。それでも、シャッフルして手札が配りなおされる。

「出来ました」

 宣言して手札を見せる。闇のカード三枚に光のカード二枚。

「ふざけるな!」

「なに!」

 男が怒り始めたので俺は反論する。

「テスペラウダにクル・キートだと! そんな偶然が何度も起こってたまるか!」

「俺配るとき触れていないんだからイカサマしようがないのに、そんなこと言われたところで困ります」

「もういい、貴様の手札は俺が最初にイカサマしていないのを確認した手札だけ配る!」

 そんな風に、言いがかりを付けられた俺は俺だけスタートの手札が判明した状態でゲームが始まろうとしていた時だ。

「あ、やっと見つけた」

 部屋に誰かが入って来たのは。先ほど俺が逃げ出したミレスだ。

「何、エレメント麻雀やっているの? ルールちゃんと説明したの?」

「はい、二枚のカードで雀頭と三枚のカードで順子か刻子作ればいいと教えられました」

「立直とか、一発とか、自摸とかは?」

「ん?」

「なに? 初心者に教えないでゲーム始めたの?」

「いや、俺は説明したがこいつが分からないって」

 いい加減なことを言っているため、俺はあれを言う事にした。

「何か知らないですけれど、俺だけ手札知られた状態でゲーム始められるのってルール違反じゃないんですか?」

「あ、おい!」

「なに? そんな変なことしてゲーム始めようとしていたの?」

 呆れた様子のミレスが俺の方に来た。

「じゃあさ、私が軍の手伝いしていい?」

「は⁉」

「なんで⁉」

 俺とうるさい男が同時に変な声を出す。

「別にいいでしょ、私の好みなんだから。ね、軍君」

「……何で俺名前勝手に知られているの?」

 ミレスに名乗った覚えがないことは棚上げして、俺は彼女の助力を得ることにした。

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